つるさき法律事務所
遺言・相続・損害保険等

神奈川県横浜市の法律事務所

弁護士津留崎基行(横浜弁護士会)
2005年10月1日

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第3章 相続分
1 各相続人の相続分はどのような割合になるか

誰が相続人となるかについては相続人の説明のところで述べた通りであり,次の4つの類型に該当する者が相続人になりうる。簡単に説明すると,この1から4のうち,1は2以下が存在するしないにかかわらず常に相続人となり,3は2に該当する者がいない場合のみ相続人となり,4は2も3もいない場合のみ相続人となる。

  1.  配偶者
  2.  子またはその代襲者
  3.  被相続人に一番近い直系尊属
  4.  兄弟姉妹又はその代襲者

上記4つの類型につきそれぞれの相続割合は次の通りとなる。

相続人1の相続分2の相続分3の相続分4の相続分
1のみの場合
2のみの場合
3のみの場合
4のみの場合
1と2の場合1/21/2
1と3の場合2/31/3
1と4の場合3/41/4

それぞれの類型に該当する者が複数いる場合は以下の項目参照。

2 「2 子またはその代襲者」に該当する者が複数の場合のそれぞれの相続分

原則として子の数に応じた頭割の割合によりそれぞれの相続分が定まる。長男か次男か,男か女かなどは無関係である。よって,子供3人のみが相続人である場合はそれぞれ1/3ずつであり,子供3人と妻が相続人である場合は,妻が1/2,子供がそれぞれ1/6の相続分となる。
ただし,非嫡出子は嫡出子の1/2の相続分とされている。よって,相続人が子供3人で,そのうち嫡出子2人,非嫡出子1人である場合,嫡出子がそれぞれ2/5,非嫡出子が1/5の相続分となる。
また,代襲者は被代襲者が受けるべきであった割合と同じである。例えば,被相続人にもともと3人の子がいたが,そのうち1人が先に死亡し,その死亡した子には3人の子供(被相続人の孫)がいたとすると,相続人は残された2人の子と,死んだ子の代襲者としての3人の孫ということになる(話を単純化するため配偶者は既にいないものとする)。この場合,代襲者である3人の孫は被代襲者である死んだ子の相続分1/3をそのまま引継ぎ,これをさらに3人で分けることになるから,結局,各自の相続分は,2人の子がそれぞれ1/3ずつとなり,3人の孫がそれぞれ1/9ずつということになる。なお,孫間の配分を決める際にも「非嫡出子は嫡出子の1/2の相続分」というルールが適用されるから,もしも3人の孫の中の1人が非嫡出子であった場合,非嫡出子である孫は1/15の相続分となり,嫡出子である孫2人はそれぞれ2/15の相続分となる。
上記「非嫡出子は嫡出子の1/2の相続分」というルールは憲法違反ではないかという批判を受けることがあるが,判例はこれを合憲としている。

3 「3 被相続人に一番近い直系尊属」に該当する者が複数の場合のそれぞれの相続分

この場合,複数の直系尊属の相続分は人数に応じた均等割りとなる。
よって,相続人が2人の祖母と1人の祖父の合計3人となる場合,各自1/3ずつの相続分となる。また,相続人が配偶者と2人の祖母である場合,配偶者が2/3,祖母がそれぞれ1/6の相続分となる。
このような単純な頭割であり,「母方と父方で1/2ずつ」という計算になるのではない。

4 「4 兄弟姉妹又はその代襲者」に該当する者が複数の場合のそれぞれの相続分

原則として兄弟姉妹の数に応じた頭割の割合によりそれぞれの相続分が定まる。長男か次男か,男か女かなどは無関係である。よって,兄弟3人のみが相続人である場合はそれぞれ1/3ずつであり,兄弟3人と妻が相続人である場合は,妻が3/4,兄弟3人がそれぞれ1/12の相続分となる。
ただし,被相続人と父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(「半血」の兄弟姉妹という)の相続分は,父母の双方を同じくする兄弟姉妹(「全血」の兄弟姉妹という)の1/2とされている。よって,相続人が兄弟3人で,そのうち全血2人,半血1人である場合,全血の兄弟がそれぞれ2/5,半血の兄弟が1/5の相続分となる。
また,代襲者は被代襲者が受けるべきであった割合と同じである。例えば,被相続人にもともと3人の兄弟がいたが,そのうち1人が先に死亡し,その死亡した子には3人の子供(被相続人のおいめい)がいたとすると,相続人は残された2人の兄弟と,死んだ兄弟の代襲者としての3人のおいめいということになる(話を単純化するため配偶者は既にいないものとする)。この場合,代襲者である3人のおいめいは被代襲者である死んだ兄弟の相続分1/3をそのまま引継ぎ,これをさらに3人で分けることになるから,結局,各自の相続分は,2人の兄弟がそれぞれ1/3ずつとなり,3人のおいめいがそれぞれ1/9ずつということになる。なお,おいめい間の配分を決める際にも「非嫡出子は嫡出子の1/2の相続分」というルール(「『2 子またはその代襲者』に該当する者が複数の場合のそれぞれの相続分」の項参照)が適用されるから,もしも3人のおいめいの中の1人が非嫡出子であった場合,非嫡出子であるおいめいは1/15の相続分となり,嫡出子であるおいめい2人はそれぞれ2/15の相続分となる。

5 遺言によって法定相続分とは違う相続分を指定することができる

上で説明した相続分は,法律が定める法定相続分であるが,被相続人は,遺言でそれぞれの相続人の相続分を定めたり,またはこれを定めることを第三者に委託することができるものとされている(民法902条1項)。
例えば,相続人が妻と2人の子供である場合,法定相続分は妻が1/2,子がそれぞれ1/4ずつであるが,遺言によって3人ともそれぞれ1/3ずつと指定することができる。この指定相続分は必ず遺言により指定する必要がある。
この指定相続分は,法定相続分よりも優先して適用されることになるが,完全に自由に指定できるわけではなく,指定相続分が各相続人の遺留分を侵害している場合は,その相続人が遺留分減殺請求権を行使することによって指定相続分が完全に実現されなくなる場合がある(遺留分及び遺留分減殺請求権については遺留分の項参照)。

6 故人から生前贈与を受けたり遺言によって財産を与えられた相続人も同じ相続分になるのか−特別受益

遺言によって財産を誰かに与えることを遺贈というが,相続人の一部のみが故人から生前贈与や遺贈を受けた場合に,残りの相続財産を相続人全員で法定相続分で分けるとすれば,生前贈与や遺贈を受けた者ばかりが利益を受け不公平になる。
例えば,相続人が3人の子であった場合において,2番目と3番目の子はサラリーマンになって故人に特段の経済的負担をかけるようなことはなかったが,1番目の子は自営業であり事業があまり成功していなかったため,故人が何かと経済的援助をしていたというような場合,相続の段階において3人等しい相続分というのでは公平を欠くであろう。
そこで,民法は一定の生前贈与や遺贈があった場合に各相続人の相続分を調整する規定を置いている。このような調整の対象となる生前贈与や遺贈を特別受益という。

7 特別受益となる生前贈与がある場合,相続分はどのように調整されるか

民法903条1項は次の通り定めている。「共同相続人中に,被相続人から,遺贈を受け,又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし,前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」
つまり,相続人の中に一定の贈与を得ていた者がいる場合は,その贈与分も相続財産に加えた前提で各自の相続分を計算した上で,贈与を受けた者についてはその計算額からその贈与分を差し引いてその者の相続分を算出するということになる。これによって,贈与がなかった場合と同じ相続分が実現されることになる。計算上は,あたかも自分の受けた贈与分を相続財産にいったん戻した上で各自の相続分を計算し直すことから,このような計算方法を「持戻し」と呼び,贈与分を戻した計算上の相続財産を「みなし相続財産」と呼んでいる。ただ,持戻しといってもあくまでも計算上の操作であって,実際に現実の財産を動かすものではない。

8 故人から生前どのような贈与を受けていた場合に特別受益に該当するか

特別受益として持戻し計算の対象となるのは,「婚姻,養子縁組のため若しくは生計の資本として」なされた贈与である(民法903条1項)。
「生計の資本」などという抽象的な文言が使用されているため,実際上これに該当するかどうかの判断はケースバイケースにならざるを得ないが,ある程度以上高額な贈与については基本的にこれに該当すると考えるべきであろう。
該当する例としては,脱サラして開業するために多額の資金の贈与を受けた場合,結婚して家を出て行くときに住居を新築してもらった場合,他の兄弟は皆高卒で働いているのに,自分1人だけ上京して大学で勉強し,下宿代や学費を支払ってもらった場合などが考えられる。

9 特別受益となる遺贈がある場合,相続分はどのように調整されるか

民法903条1項は次の通り定めている。「共同相続人中に,被相続人から,遺贈を受け,又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし,前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」
つまり,まずは遺贈や生前贈与はなかったものという前提で各自の相続分を計算し直したた上で,遺贈や贈与を受けた者についてはその計算額からその遺贈・贈与分を差し引いてその者の相続分を算出するということになる。

10 特別受益となる贈与や遺贈がそれを受けた者の法定相続分を超える場合

上で述べた通り,特別受益となる贈与や遺贈がある場合,あたかもそれらがなかったかのように各自の本来の相続分を法定相続割合に従って計算した上で,贈与や遺贈を受けた者については,その本来の相続分から自分の受けた贈与や遺贈の額を差し引いた分が自分の取り分ということになる。
ここで,贈与は遺贈の額が本来の自分の相続分を超えていた場合が問題になる。その場合,その者の計算上の取り分はマイナスとなり,理屈上は本来の相続分を超えて贈与・遺贈を受けた部分を返還すべきことになるが,法律上は返還はしなくてよいものとされている。この場合,贈与・遺贈を受けた分だけでその者の取り分は全てということになり,それを超えて相続財産から配分を受けることはできないということになる。
贈与・遺贈を受けた者が,本来の法定相続割合を超えた部分を返還しなくてもよいものとされる結果,その他の相続人にしわ寄せが行き,その他の相続人は本来の法定相続割合で計算した金額よりも小さい額しか取り分が認められないことになる。その結果,遺留分(法律上定められた最低限相続できる一定割合)を侵害される相続人が出る場合には,贈与や遺贈の効力が否定される場合がある(詳細は「遺留分」についての説明の項参照)。

11 特別受益の計算において,かなり昔に故人から生前贈与を受けた建物・金銭の評価方法

民法904条は,特別受益として持戻し計算する贈与物の価額について,「受贈者の行為によって,その目的である財産が滅失し,又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。」としている。
よって,20年前に家を贈与された場合は,その家が相続時に贈与された時の状態で存在するものとして金額を評価することになる。贈与を受けた者が過失によって火災を起こしてその家が焼失してしまてているときも同様である。ただし,地震などの贈与を受けた者の行為によらずしてその家が消失してしまっている場合にはもはや持戻し計算の対象にしなくても良いものとされている。
このように,相続開始時の貨幣価値で贈与額を評価し直すという処理は,贈与の対象が金銭であった場合も同様であり(判例),金銭贈与による特別受益がある場合は,贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算した価額をもって持戻し計算の対象額とすることになる。

12 特別受益の持戻し計算は,被相続人の意思によって免除できる

上で述べたような特別受益についての持戻し計算は,できる限り相続人間の公平を図るために,生前贈与や遺贈を考慮して各相続人の取り分を定めようとする考え方に基づくものである。
しかし,そもそも被相続人に全部の相続人を公平に扱う意思がなく,特定の相続人を特別扱いする意図で贈与・遺贈を行う場合がある。このような場合,被相続人は,自分が行う贈与や遺贈について上で述べたような持戻し計算を免除するという意思表示を行うことができる。この意思表示は遺言によってもすることができる。この意思表示をすることによって,生前贈与も考慮せず,遺贈部分も除外した残りの相続財産だけを対象として共同相続人に法定相続分に従った相続をさせることが可能になる。
ただし,持戻し計算を免除する結果,遺留分(法律上定められた最低限相続できる一定割合)を侵害される相続人が出る場合には,持戻免除の意思表示の効果が否定される場合がある(遺留分については「遺留分」の説明の項参照)。

13 特別受益がある場合の具体的な相続分計算例

夫Hが死亡して,相続人はWと子ABCがいるとする。Hの遺産は2,300万円であるが,Hは生前にAに対して100万円の贈与をしており(相続時の評価も100万円とする),Wに対して200万円を遺贈したものとする。
相続開始時の遺産の額は2,300万円であるが,これに特別受益としてAへの贈与100万円が持ち戻された額がみなし相続財産である。
みなし相続財産=2,300万円+100万円=2,400万円
よって,各自の具体的相続分額は,以下のようになる。
W:2,400万円×1/2−200万円(遺贈を受けた分)=1,000万円
A:2,400万円×1/2×1/3−100万円(生前贈与を受けた分)=300万円
B:2,400万円×1/2×1/3=400万円
C:2,400万円×1/2×1/3=400万円
このように,特別受益のあるWとAについて調整がなされ,WとAの相続分が小さくなっているが,Wについては別途200万円の遺贈分の取り分があり,Aについては既に100万円の生前贈与を受けているのであるから,これら遺贈分・生前贈与分も考慮すると,結果的に各自の取り分は法定相続割合に従ったものになっていることが分かる。

14 故人の遺産形成に寄与した相続人も他の相続人と同じ相続分になるのか−寄与分

前に述べた特別受益に関する調整規定は,故人から特別な利益を受けることによって遺産を減らした者について,残された遺産からのその者の取り分を減らすことで公平を図る制度であるが,逆に故人の遺産形成にあたって寄与した者については,残された遺産からのその者を取り分を増やすことで公平を図る必要が生じる。
そこで,このような寄与があった場合の調整規定も民法は用意しており,これを寄与分制度という。
例えば,故人が商売を営んでいたが,長男がその商売に対して献身的な貢献をしたために多大な財産が形成されたというような場合には,寄与分制度によって,その商売に見向きもしなかった次男と比して,長男により大きな相続分が認められることになる。

15 寄与分がある場合,相続分はどのように調整されるか

民法904条の2第1項は次の通り定めている。「共同相続人中に,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし,第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」
つまり,まずは寄与によって増えた分の相続財産がはないものという前提で各自の相続分を計算した上で,寄与した者についてはその計算額にその寄与分を足してその者の相続分を算出するということになる。

16 寄与分制度によって利益を受けることができるのは誰か

寄与分制度によって利益を受けることができるのは相続人に限られる(民法904条の2第1項)。
寄与分制度というのは,寄与者の尽力によって相続財産が増加した部分について,あたかもその寄与者の固有の財産であるかのように取り扱う制度であるから,このような取扱が妥当するのは理屈上は寄与者が相続人である場合に限られない。例えば,被相続人の事業活動に対して内縁の妻が多大な貢献をした場合については,その貢献によって増加した財産は実質的には内縁の妻固有の財産と評価し,内縁の妻に相当の財産が与えられることが妥当である。
しかし,現行法上は寄与分制度によって利益を受けるのは相続人のみであるから,相続人になりえない内縁の妻は寄与分制度による利益を受けられないことになる。
現行法上は,相続人以外の寄与者の救済手段は,不当利得に基づく権利を主張する等に限られているから,被相続人がこのような者に対して相当の遺産を与えたいと考える場合は,予め遺言や生前贈与等の方策を講じておく必要がある。

17 どのような寄与があれば寄与分として考慮されるのか

民法によれば,寄与分として考慮されるのは,「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき」である。
「事業に関する労務の提供」「(事業に関する)財産上の給付」「被相続人の療養看護」という3つの具体的類型が掲げられているが,その次に「その他の方法」とあるから,結局3つの具体的類型は例示であって,寄与はどのような態様であっても良いということになる。
ただし,あくまでも「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」があることが必要であって,財産上の効果を伴わない寄与は寄与分として考慮されない。例えば,献身的な看護によって被相続人が安らかに死亡することに貢献したが,相続財産の増減には特に関係がなかったような場合には寄与分として考慮されない。逆に内心嫌々ながらの看護ではあったが被相続人の入浴その他の身の回りの世話をしていたのでヘルパーを雇わずに済みその分支出を免れたような場合には寄与分として考慮されることになる。

18 寄与分がある場合の具体的な相続分計算例

夫Hが死亡して,相続人はWと子ABCがいるとする。Hの遺産は3,000万円であるが,WはHが生前営んでいた事業に多大に貢献しており,その貢献額は600万円と評価されるものとする。
相続開始時の遺産の額は3,000万円であるが,ここから寄与分を600万円を控除した額がみなし相続財産である。
みなし相続財産=3,000万円−600万円=2,400万円
よって,各自の具体的相続分額は,以下のようになる。
W:2,400万円×1/2+600万円(寄与分)=1,800万円
A:2,400万円×1/2×1/3=400万円
B:2,400万円×1/2×1/3=400万円
C:2,400万円×1/2×1/3=400万円
このように,寄与分のあるWについて調整がなされ,Wの相続分が大きくなっているが,Wについては600万円分の寄与分があり,この部分は実質的に相続財産ではなくWの固有の財産のように考えることができるから,これを除外した実質的な相続財産については,各自の取り分は法定相続割合に従ったものになっていることが分かる。