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第1章 会社役員賠償責任保険(D&O保険)の概要
第1節 会社役員賠償責任保険(D&O保険)とは
会社役員賠償責任保険とは,株式会社の取締役・監査役等の会社役員が,その業務遂行に起因して損害賠償請求を受けたことによって被る経済的損害をてん補する保険である。
典型的には,会社役員が株主代表訴訟を提起された場合の損害賠償金や訴訟費用,弁護士費用が担保される。
この保険は公的な保険制度ではなく,営利企業である民間の損害保険会社が保険商品として販売している保険であり,わが国の多くの大手・中堅損害保険会社が取り扱っている保険である。
会社役員賠償責任保険は,「D&O保険」という通称で呼ばれることが多い。「D&O」とは「Directors and Officers」の頭文字であり,取締役・高級管理職といった会社役員を意味する。
第2節 会社役員の損害賠償リスク
株式会社の取締役が,その職務遂行に起因して会社や第三者に損害を与えた場合,当該取締役は被害を受けた会社や第三者に対して法律上の損害賠償責任を負う可能性がある。
例えば,株式会社の取締役が間違った経営方針を貫いたために会社の営業が行き詰まり業績が悪化した場合,業績悪化による会社の損害につき会社に対して取締役が賠償責任を負う可能性がある。
また,例えば株式会社の取締役が間違った経済見通しに依拠した事業計画に基づいて他の会社に合弁事業を持ちかけたため,当該事業に乗り出した当該他の会社に損害が発生した場合,その損害につき当該他の会社に対して当該取締役が賠償責任を負う可能性がある。
株式会社の監査役は,会社の業務執行が適法・妥当になされているかを監視・監督する任務を有するものとされているから,上記の例のように取締役が会社・第三者に対して損害賠償責任を負う場合において,その取締役が行った業務執行に対する監視・監督義務違反を根拠として監査役が会社・第三者に対して損害賠償責任を負う可能性がある。
このように,株式会社の取締役・監査役は会社・第三者に対して損害賠償責任を負う可能性があり,会社・第三者から損害賠償請求を受ける可能性がある。
そして,会社が被った損害を取締役・監査役に対して賠償請求する手段として,会社が直接的に取締役・監査役に対して賠償請求しうるだけではなく,会社の株主が会社を代表して損害を被った会社になり代わって取締役・監査役に対して賠償請求するという株主代表訴訟という手段が商法上用意されている(商法第267条以下)。
よって,株式会社の取締役・監査役には,会社・第三者から直接損害賠償請求を受け又は株主代表訴訟によって会社が被った損害の賠償を請求されるというリスクがあることになる。
第3節 D&O保険の沿革
第1款 米国の状況
D&O保険のはじまりはロンドンのロイズにより引き受けられたのが始まりであると言われているが,世界で最初にD&O保険が広く普及した国は米国である。
周知の通り,米国は旧来から訴訟社会であり,会社役員に対する法的責任の追及も厳しく,会社役員に対して巨額の損害賠償を請求する訴えが頻繁に提起されるという環境にある。
そこで,D&O保険が1940年代に米国で発売され,同国の大企業に広く普及するに至った。同国では,いまやD&O保険を手配しない会社では,それを理由として会社役員になりたがらない者がいるというケースもあると言われているほどD&O保険が不可欠な保険として認知されている。
第2款 わが国の旧来の状況
わが国においても商法上は古くから会社役員の厳格な法的な責任が規定されており,その責任追及手段の1つである株主代表訴訟制度も用意されていた。
ところが,実際の運用面においては株主代表訴訟が活用されることはなく,会社役員に対する厳格な法的責任の追及がなされる可能性が現実のリスクとしてほとんど認識されない時期が長らく続いた。
むしろ,会社役員という地位は,いわばすごろくの上がりのようにサラリーマンの出世競争の到達点であって,そこにたどり着きさえすれば将来は安泰であるというような認識が一般的であったように思われる。
このような実体法上の制度とその現実の運用面とのギャップは,次のような理由によってもたらされたものであると考えられる。
もともと日本の株式会社は企業間の株式の持ち合いや安定株主の存在により安定的に経営されてきており,経営陣の失態に対して厳格に責任追及しようとする姿勢を見せる株主の割合は比較的少ないと考えられる。
また,株主代表訴訟の構造として,株主が代表訴訟に勝訴したとしてもその獲得した損害賠償金は会社に支払われるものであって,株主は直接的には勝訴による経済的利益を享受することはない。そうであるにもかかわらず,訴訟を提起する場合は平成5年の商法改正までは株主代表訴訟で求める損害賠償額に応じた手数料(印紙)を裁判所に対して納める必要があった。この点に関し,例えば,会社役員に対する470億円の損害賠償請求につき2億3,500万円の印紙を要すると判断した裁判例もある。
また,法律の専門家とは限らない株主が訴訟を提起する場合は通常弁護士に委任することになるが,わが国においては委任の段階で損害賠償請求の額に応じた着手金が必要であるとする弁護士がほとんどであるから,株主代表訴訟を提起しようとする株主は裁判所に納める高額な手数料の他に弁護士に支払う着手金も用意しなければならない。この点,米国においては裁判所に納める手数料は訴訟によって請求する金額の大小に関わらず数万円程度の低額な手数料で足るものとされ,また,多くの弁護士が着手金を一切取らず勝訴時にのみ勝訴した額の一定割合の金額を報酬として取るいわゆる成功報酬制度で事件を引き受けるから,このような米国の状況と比較すると,わが国において株主代表訴訟を提起しようとする株主が極めて多額の金銭的負担をする必要があることは明らかである。
以上のような理由から,わが国においては株主代表訴訟制度が活用されることなく,会社役員に対する実体法上の厳格な責任とその責任追及手段が法的には整備されていながら,これに対応する会社役員にとってのリスク(D&Oリスク)の存在がほとんど認識されない時代が長らく続いた。
第3款 英文約款のD&O保険の発売
わが国の経済が高度成長を遂げると,大企業の中には日本国内のみの活動にとどまらず,諸外国に現地子会社を保有するなどの形態でその活動領域をグローバルに展開するものも出現した。
このようなグローバル企業は,必然的に海外においてD&Oリスクに直面することとなった。
特に,米国に進出した企業が,現地におけるD&Oリスクの大きさ及びこれに対応するD&O保険という存在を強く認識したであろうことは想像に難くない。ここにおいて,わが国の企業のD&O保険に対するニーズが初めて生じた。
そこで,平成2年,米国におけるD&Oリスク及びD&O保険に精通するAIU保険会社を中心とするいくつかの保険会社が,わが国向けのD&O保険を開発し,保険認可を得て販売を開始した。
その後,他の保険会社も同様の認可を取得してわが国の多くの保険会社がD&O保険を販売するに至った。
しかし,この時点でのD&O保険に対するニーズはグローバル企業が中心であり,D&O保険を販売する保険会社の側も,この保険をわが国の株式会社に広く販売するというスタンスを有していた訳ではなかったから,D&O保険という存在が一般に広く認知されるには至らず,ましてその存在が注目を集めることもなかった。
第4款 平成5年商法改正
平成2年の秋,長らく続いたわが国の好景気が終焉を迎え,後にいわゆる「バブル経済の崩壊」と呼ばれることになる状況が出現した。
そうなると,好景気の時には顕在化することのなかった企業活動の問題点が顕在化するという事態が多発し,名の通った企業における不祥事が次々と明るみに出るに至った。
このような不祥事がマスメディアで大きく取り上げられる状況下,企業の不祥事を作り出した当事者である会社役員に対する法的責任の追及が声高に叫ばれる社会情勢が次第に形成された。
かかる社会情勢にも後押しされるような形で,平成5年に商法が改正され,株主代表訴訟を提起する場合に裁判所に納める手数料(印紙)は,損害賠償金額の大小を問わず一律8,200円で足ることとなった。
これによって,弁護士費用の問題は依然として残るものの,会社役員に対して巨額の損害賠償を求める株主代表訴訟の提起が容易になり,現実に巨額の損害賠償を求める株主代表訴訟が相次いで提起されることとなった。
ここに至ってわが国でもようやくD&Oリスク及びD&O保険の存在が脚光を浴びることとなったのである。
第5款 D&O保険の問題点の顕在化
わが国において,平成2年から細々とD&O保険が販売されていた状況においては,D&O保険に注目されることもなければその問題点を指摘されることもなかったのであるが,D&O保険への注目が集まるにつれてその問題点も次の通り法律家や学者から多数指摘されるようになった。
1 保険約款が英文約款であること
前述の通り,当時のD&O保険はグローバル企業を主なターゲットとして開発されたものであったことから,日本国外における保険事故の発生及び事故処理を想定し,保険約款に用いる言語として英語が採用されていた。
しかし,活動範囲がほぼ日本国内に限られる会社がD&O保険を利用とする場合を考えると英文約款であることは端的に不便である。
また,当時のD&O保険の約款が,米国において普及しているD&O保険の約款に倣って開発されたものであったことから,言語として単に英語が用いられているだけでなく,約款の構造が米国の法制度を前提としたものであったり,用語も米国法の概念を下敷きにしたものであったりしたことから,これを日本の法制度の下で解釈・適用するには困難を伴う点があった。
以上のような理由から,わが国の株式会社を広くターゲットとして販売するD&O保険の約款の文言は,わが国の法制度及び法概念を前提とした和文約款にすべきであるという指摘が各方面からなされた。
2 保険料を会社が支払うことの適法性
D&O保険は会社役員が損害賠償請求を受けたことによる会社役員自身の損害をてん補する保険であり,被保険者は会社ではなく会社役員である。したがって,その保険料を会社役員が全額負担するのであれば受益者負担であり問題はない。しかし,当時のD&O保険は米国のD&O保険に倣い,会社を保険契約者とすることを前提として保険料は会社が全額負担するものとして販売されていた。
そこで,会社役員のための保険の保険料を会社が支払うことについて次のような問題点が指摘されることになった。
(1) 利益相反取引
会社が取締役と会社との間で利益相反する取引をすることは原則として禁止され,これを行うためには取締役会の承認決議が必要とされている(商法第264条)。
しかるに,D&O保険による利益は取締役が享受するのであるから,この保険料を会社が負担することは端的に取締役が利益を受ける一方で会社が損失を被るという関係にあり,類型的に利益相反取引に該当するのではないかという問題点が指摘された。
もしも利益相反取引に該当するのであるとすれば,これを適法に行うためには取締役会の承認決議が必要ということになるが,この承認決議には当該決議に関して特別な利害関係を有する者は参加できないものとされ(商法第260条の2第2項),D&O保険では取締役全員が被保険者とされるから取締役全員が特別利害関係人ということになり結局この承認決議をすることもできないという深刻な問題につながることになる。
(2) 忠実義務違反
取締役は,会社のために忠実にその職務を遂行する義務を負うとされているところ(商法第254条の3),前述の通り類型的に利益相反取引に該当するようなD&O保険を締結することはこの忠実義務に違反するのではないかという問題点も指摘された。
(3) 取締役の責任免除条項の潜脱
取締役が会社に対して負担する損害賠償責任を会社が免除するためには原則として総株主の同意が必要である(商法第266条5項)。
D&O保険は取締役が会社に対して負担する損害賠償額を支払うことをその内容として含んでいるから,そのための保険料を会社が支払うというのであればこれは結局,当該損害賠償額を会社が負担したということと同じであり,会社が取締役の損害賠償責任を免除したに等しいという見方も可能である。
このような観点から,D&O保険への加入は,取締役の責任免除について厳格な手続を定めた上記商法第266条5項の規定を潜脱するものではないかという問題点も指摘された。
(4) 取締役の報酬規定の潜脱
取締役が受けるべき報酬については,定款の定め又は株主総会の決議が必要とされる(商法第269条)。
D&O保険による利益を享受するのは取締役であり,その保険料を会社が支払うというのであれば,それは会社から取締役への利益の移転があったものと見ることができる。
このような観点から,D&O保険の保険料を会社が支払うことは,取締役への報酬支払と同視することができるから,この点について定款の定め又は株主総会の決議を欠くというのであれば,それは上記商法第269条の潜脱ではないかという問題点も指摘された。
3 放漫経営の助長
取締役が任務懈怠によって会社又は第三者に対して損害を与えた場合,当該取締役はその損害を賠償しなければならないという厳格な責任規定は,かかる損害賠償責任を負担することによる経済的損害を回避したいと考えるであろう取締役の任務懈怠を防止するのに一定程度の役割を果たしているものと言える。
しかるに,その損害がD&O保険でてん補されるというのであれば,仮に取締役が損害賠償責任を負担したとしてもその損害がD&O保険によりてん補されることになり,取締役個人が損害を被ることがなくなるから,もはや取締役の任務懈怠に対する歯止めがなくなり,放漫経営が助長されるのではないかという懸念がある。
そこで,このように放漫経営を助長するようなD&O保険は公序良俗に反し無効(民法第90条)ではないかという問題点も指摘された。
第6款 改定後のD&O保険の対応
以上の通り,わが国で最初に発売されたD&O保険に対しては法的問題が多々あることが指摘された。これではD&O保険契約を締結する会社の行為が違法行為であり,かかる違法行為に関与した会社役員が会社に対して損害賠償責任を負うとして株主代表訴訟が提起されることも想起され,株主代表訴訟による損害を回避するためのD&O保険が逆に株主代表訴訟を招くという矛盾が生じかねない事態に陥った。
このような法的問題についての議論が生じたのはわが国固有の状況ではなく,米国においてもかつてD&O保険の出現時に同様の法的議論があったのであるが,米国諸州においては実際上D&O保険が株式会社実務にとって不可欠の保険であるとの認識の下に,会社が保険料を支払ってD&O保険を調達することを合法とする方向で立法的にこれらの問題が解決されている。しかし,わが国では立法論として米国における解決方法に倣ってD&O保険を合法化する法的手当を実施すべきであるという見解も法律家などから表明されたのであるが,そのような立法的手当がなされることはなかった。
そして,わが国では今日に至るまで会社がD&O保険契約を締結することを合法であると規定する明文の規定は法定されていない。
そこで,D&O保険を取り扱うわが国の保険会社は,D&O保険に対して各方面から指摘された法的問題点を解消するためにD&O保険の改定に乗り出した。この改定D&O保険の開発は,AIU保険会社,東京海上火災保険,三井海上火災保険等複数の保険会社の共同作業で行われ監督官庁の認可取得がなされた。
そして,他の保険会社も同内容の認可取得を行い平成5年12月に改定後のD&O保険が発売された。
前記各種の問題点を解消すべく,改定後のD&O保険は以下のような内容を有している。
1 和文約款
もっぱら日本国内で活動する会社も含めたわが国の株式会社に広く販売するための保険商品に適用される約款の文言が英文では取り扱いに不便であるという指摘はもっともなものであったことから,日本語を用いた普通保険約款が創設された(会社役員賠償責任保険普通保険約款)。
この約款は,単に旧来の英文約款を和訳したものではなく,約款をわが国の法制度に適合させ,他の賠償責任保険の約款構造との統一性も図るべく,言い回しを見直したり,約款の構成を変更するなど,内容的な見直しも同時に施されている。
内容的見直しの一例として会社補償の取り扱いが挙げられる。
会社補償とは,会社役員が職務遂行に起因して損害賠償請求を受けた場合に,それによって被る損害を会社が契約,定款等に基づいててん補することを言い,米国諸州ではかかる会社補償が合法であるとの立法的手当ての下で多くの会社で実施されている。会社補償を実施することによる会社の損害は,損害賠償請求を受けた会社役員が被る損害と実質的には同じものであるから,米国におけるD&O保険は会社の損害及び会社役員の損害のいずれもてん補するものとして構成されている。すなわち,D&O保険はDirectors and Officers Liability and Company Reimbursement Policy(会社役員賠償責任・会社補償保険)として構成されている。そして,米国のD&O保険を範として開発されたわが国の旧D&O保険はこの構成に倣ったため,普通約款の中に会社補償をてん補する条項が盛り込まれていた。しかし,わが国では会社補償を合法であると定めた法律はないし,学説もこのような会社補償は一切許されないと解する見解が圧倒的多数であることから,わが国の株式会社では会社補償は実施されておらず,それゆえ会社補償を担保する保険ニーズは原則として存在しない。そこで,新開発の和文約款では普通約款から会社補償に関する規定を削除した。ただし,海外子会社を持つ会社などで,現地法人における会社補償を担保するニーズがある場合も考えられることから,別途会社補償担保特約条項という特約条項を新設して,このようなニーズがある会社のD&O保険契約についてはこの特約条項を附帯することで対応することとした。
なお,このようにわが国で利用しやすい和文約款が創設されると共に,グローバル企業や外資系の企業などにおいて英文約款の需要がある場合も考えられることから,和文約款の創設と同時に旧来の英文約款によるD&O保険約款も一部手直しの上存続している。しかし,その後わが国で契約されたD&O保険の圧倒的多数は和文約款によるものであり,和文約款によるD&O保険がわが国のD&O保険のスタンダードとなっていることから,本稿では特に断らない限りこの和文約款によるD&O保険を前提として説明を行うこととする。
2 保険料の一部の会社役員個人負担
旧来のD&O保険で最大の問題とされていたのは保険料を会社が負担する点である。
しかし,この点を問題とする見解のほとんどは,会社役員が会社に対して損害賠償責任を負担するケースを念頭において,これに対応する保険料を会社が負担することが適法であるか否かという議論を展開している。
もちろん,このケースがD&O保険による典型的な保険事故であることは明らかであるが,D&O保険が保険金を支払う保険事故は何もこのケースに限られるわけではない。そこで,次の通りケースを分けてそれぞれのケースにおいてどのような議論が展開されてきたのかを整理する。なお,D&O保険は法律上の損害賠償金の他,訴訟手数料・弁護士費用等の争訟費用も保険金支払の対象としているから,以下において会社役員が責任を負うとされているケースにおいては損害賠償金及び争訟費用が保険金として支払われることを想定し,責任を負わずに済むとされているケースにおいては争訟費用のみが保険金として支払われることを想定している。
(1) 会社役員が会社から損害賠償請求を受け責任を負うケース
(2) 会社役員が会社から損害賠償請求を受けるが結果的に責任を負わずに済むケース。
(3) 会社役員が株主代表訴訟を提起され責任を負うケース。
(4) 会社役員が株主代表訴訟を提起されるが結果的に責任を負わずに済むケース
(5) 会社役員が会社以外の第三者から損害賠償請求を受け責任を負うケース
(6) 会社役員が会社以外の第三者から損害賠償請求を受けるが結果的に責任を負わずに済むケース
まず,ケース(1)及びケース(2)は会社が会社役員の責任を追及するケースであるが,これらの類型はD&O保険において保険金支払対象外(免責)とされていることから,D&O保険上の問題点を検討する必要がない。
次に,ケース(5)及びケース(6)は会社でも株主でもない第三者が会社役員の責任を追及するケースであり,これらの類型はD&O保険において保険金支払の対象となるが,これらのケースについての保険金支払に対応する保険料を会社が支払うことに対して,これを違法であるとする見解はあまり見受けられない。これを違法視するならば,会社役員が運転する社有車による対人・対物事故についての会社役員の損害賠償責任を担保するための自動車保険の保険料を会社が支払うことも同じく違法であるとしなければ平仄が合わないが,これはあまりにも現実離れした見解であると言うほかないであろう。確かに,これらのケースにおいても,一方で会社役員が保険による利益を享受し,他方で保険料を出捐することによる会社の損失が生じるという関係があるから,理論的には会社役員と会社との間で利益相反の関係があるということは可能であるし,取締役の報酬規定の潜脱,放漫経営の助長という批判は理論的には成り立ちうるであろうが,実際上このような理論的な考察を厳格に貫こうとする見解は少数であると言えよう。
次に,ケース(3)及びケース(4)は株主代表訴訟による責任追及であるが,これは会社役員の会社に対する損害賠償責任が問題になるという意味でケース(1)及びケース(2)と同じであるが,責任追及方法として株主代表訴訟という形態に基づくものであり,これらのケースはD&O保険の保険金支払対象となる。
ケース(4)は会社役員が株主代表訴訟に勝訴した場合であり,結果的に株主の請求は理由がない不当な訴訟であったことが明らかになったということであり,当該会社役員には何ら責められるべき事由がなかったことを意味する。そうであるにもかかわらず,株主代表訴訟の被告とされたことで争訟費用の支出という損害を被ったのであるから,この損害は会社役員としての正当な業務遂行に伴って生じたものである。したがって,この損害をてん補するための保険金に対応する保険料を会社が支払うことに対して,これを違法であるとする見解はあまり見受けられない。
残るはケース(3)であるが,このケースすなわち会社役員が株主代表訴訟に敗訴し,会社に対する損害賠償責任を負担するケースこそが,D&O保険の保険料を会社が負担することについての適法性を議論する際に典型事例として想定されていたケースである。まさにこのケースでは会社役員と会社とが債務者・債権者という対立当事者となっており,利益相反性が顕著に現れるし,保険金支払によって会社が会社役員に対して有する損害賠償債権が満足を受けることが取締役の責任免除条項の潜脱と評価される余地を生み出すことになる。
学説の中には,実際のD&O保険の内容についての詳細な検討を踏まえた上で,D&O保険の有用性を積極的に評価し,ケース(3)の場合も含めていずれのケースについてもそれについて支払われる保険金に対応する保険料を会社が支払うことは適法であるとする見解もあった。しかし,論者によってニュアンスは様々であるが,ケース(3)を前提とする場合において,D&O保険の保険料を会社が負担することは立法論として合法化することは検討されてよいが,現行法の解釈論としては違法と評価せざるを得ないという見解が少なくなかった。
以上のような状況を前提として,D&O保険の適法性を確保すべく改定後のD&O保険では次のような取扱がなされることとなった。すなわち,前述のケース(4),ケース(5)及びケース(6)についての保険金支払に対応する保険料と,前述のケース(3)についての保険金支払に対応する保険料とを明確に区分し,前者については会社が負担しても良いが(※ 会社役員が負担しても良いが実務的には会社が負担するのが原則的取扱である),後者については会社が負担することを許さず,被保険者たる会社役員が自己負担すべきものとする取扱とした。そして,このような取扱を可能とするために,D&O保険の普通約款(会社役員賠償責任保険普通保険約款)では前述のケース(4),ケース(5)及びケース(6)についてのみ保険金を支払うものとし,ケース(3)については普通約款に付帯する特約条項(株主代表訴訟担保特約条項)に基づいて保険金を支払うという約款構成を採用した。これによって,普通約款についての保険料は会社負担可能であり,株主代表訴訟担保特約条項についての保険料は会社役員が自己負担すべきであるという区分が明確に示されることになった。
約款作成の技術的な側面から見ると,必ずしも「特約条項」という形態で区分しなくとも,普通約款の中でセクションを分けてそれぞれのセクションごとの保険料を算出し,前述のケース(3)についての保険金支払を定めるセクションの保険料を会社役員が自己負担すべきとするような方法も可能と考えられる。しかし,保険料について会社負担可能部分と会社役員自己負担部分とをできる限り明確に区分するという観点からは普通約款とは切り離された別個の特約条項という形態は有用であると言えよう。ただ,特約条項という形態を採用したために,これを附帯しない普通約款のみのD&O保険も可能であるとの誤解を招きやすくなった。特約条項という形態で区分した理由は,上記の通り会社役員が自己負担すべき保険料部分を明確にするためであって,D&O保険としては普通約款と株主代表訴訟担保特約条項とを合わせて初めて完成品と言えるのであるから,保険会社が株主代表訴訟担保特約条項を付帯しないD&O保険を引き受けることは実務的にはほぼ考えられない。
このように,改定後のD&O保険においては,保険料の会社負担について強い疑義が寄せられていた部分について会社役員の自己負担という制度が導入された訳であるが,それでも保険料の全額が会社役員の自己負担となるのではなく,普通約款部分の保険料は依然として会社が負担しても良いという取扱をしていることから,この点を捉えて依然としてD&O保険は違法であると言う見解も理論的にはありうる。しかし,最大の争点であった前述のケース(3)の取扱について保険料を会社役員の自己負担とする取扱を定めたことによって,改定後のD&O保険について会社が保険料が支出する取扱について違法視する見解はほぼ見受けられなくなったと言える。
3 放漫経営助長の防止
D&O保険が会社役員の不適正な経営を助長する危険性があるのだとすれば,それは会社役員が不適正な経営をしたとしてもそれによって会社役員が被る損害について保険金が支払われ損害額が全ててん補されるからである。
よって,不適正な経営を招かないためにD&O保険の側で配慮しうる点として,まず保険によって救済することさえ不当であると見られる程度の著しく不正な経営であると評価しうる会社役員の行為に起因する損害については保険金支払の対象外とすることが考えられる。次に配慮しうる点として,損害額の全額をてん補するのではなく必ず一定額の損害については被保険者たる会社役員が自己負担すべきものとすることにより会社役員に不適正な経営を回避しようとする動機を生じさせることを図ることが考えられる。
そこで,改定後のD&O保険ではこのような点に配慮して次のような取扱をすることにしている。
(1) 広範な免責条項
改定後のD&O保険では,会社役員が法令違反であることを認識しつつ行為に及んだことによる損害は免責とされている。法令違反における法令の範囲に限定は一切なく全ての法令が含まれる。
また,犯罪行為,インサイダー取引,違法な利益供与など,社会的非難の程度が強い違法行為については,事後的・客観的にそのような違法行為があったと認定されうる限り,当該行為に及んだ会社役員の認識の有無を問わず,当該行為による損害は免責とされている。
このように,改定後のD&O保険では著しく不正な経営行為であると評価しうる会社役員の行為については,広範な免責条項によって保険金支払の対象から除外している。
(2) 免責金額,縮小てん補割合の設定
改定後のD&O保険においては,会社役員が被った損害を保険金でてん補するにあたって生じる会社役員の自己負担額に関して,免責金額および縮小てん補割合という2つの項目が適用される。
この2つの具体的数値は保険契約締結時に定められ保険証券に明記される。
免責金額とは,被保険者が被った損害額のうち,保険によるてん補の対象とならず被保険者が自己負担しなくてはならない一定の自己負担額をいう。よって,免責金額が設定されている保険契約については,損害額のうちこの免責金額を超える部分のみが保険によるてん補の対象となる。
例えば,免責金額30万円を設定した保険契約につき,損害額100万円の保険事故が生じた場合,損害額のうち30万円を超える部分すなわち70万円の保険金が支払われることになる。改定後のD&O保険では,最低でも数十万円の免責金額が設定されることが通常である。
次に,縮小てん補割合とは,被保険者が被った損害額のうち,保険によるてん補の対象となる一定割合をいう。
よって,縮小てん補割合が設定されている保険契約については,損害額にこの縮小てん補割合を乗じた金額が保険金として支払われることになる。
逆に言えば,1から縮小てん補割合を差し引いた割合部分は保険金が支払われず被保険者の自己負担になる。
例えば,縮小てん補割合80%が設定された保険契約につき,損害額200万円の保険事故が生じた場合,200万円に80%を乗じた160万円が保険金として支払われ,40万円が被保険者の自己負担となる。
縮小てん補割合が適用されると,損害額が高額になるにつれて被保険者の自己負担となる金額も増加するから,損害額が高額になるようなケースにおいても被保険者の不適正行為を抑止する機能が期待できる。
改定後のD&O保険では,95%以下の縮小てん補割合が設定されることが通常である。
改定後のD&O保険では免責金額及び縮小てん補割合の両方が設定される。この場合の具体的な支払い保険金の計算方法については「第3章 支払保険金の額」で説明する。
このように,改定後のD&O保険において,免責金額と縮小てん補割合のいずれも設定を要するとされたのは,どのような損害額の保険事故が発生しても必ず一定の金額以上かつ一定の割合以上の自己負担額が被保険者たる会社役員に生じるようにして,会社役員がD&O保険があるからといって不適正な経営に流れることを防止しようとしたからである。
第7款 今後の展望
以上に述べたようなD&O保険の改定によって,旧来のD&O保険に対して投げかけられていた違法との疑念はほぼ払拭され,わが国の会社にとって利用しやすいものとなったことから,D&O保険の有用性に注目が集まる社会情勢の後押しもあって,株式を公開している大規模企業を中心に急速に普及し,今日では上場企業の8割程度がD&O保険に加入していると言われている。
今後D&O保険の有用性をさらに高め,より利用しやすくするにあたっては,次のような点が問題となるであろう。
1 保険料の役員個人負担の問題
保険料の一部とは言えD&O保険の保険料を会社役員が自己負担しなくてはならないという点はD&O保険の利用しやすさを損ねている。
この点の改定は保険会社の努力で実現できるものではなく,D&O保険の保険料を全額会社が負担することを許容する規定を導入する法改正が望まれる。
米国の諸州においては,D&O保険の保険料の一部を会社役員が負担するという取扱をしていた時期を経て,全額会社負担を許容する立法的手当がなされるに至っているようであるが,わが国においてもこのような立法的手当がなされれば保険料の全額会社負担が実現することになろう。
2 担保範囲の明確化及び担保範囲の拡張の可否
保険会社にとっても保険契約者にとってもどこまでが保険金支払の対象になるかという担保範囲は予め明確であることが好ましい。
かかる観点からは現在のD&O保険約款における免責条項はその適用範囲が不明確であるという批判が寄せられることがある。
この点については,裁判例その他の具体的取扱の蓄積を待つばかりではなく,約款改定や担保範囲明確化のための特約条項の作成・附帯等によってできる限り担保範囲を明確化し,保険会社と保険契約者との間でトラブルが生じない努力が保険会社に求められよう。
また,現在のD&O保険が広範な免責条項を有し,免責条項に該当せずに保険金が支払われるとしても免責金額,縮小てん補割合によって支払保険金が削減される点について,保険の有用性を低下させているとの評価がなされることがある。
この点の改善はモラルハザードの問題にかかわる。
モラルハザードとは,事故による損害回避のための手段を用意することにより,人の注意が散漫になって,かえって事故発生のおそれが高まるという危険をいう。
D&O保険の存在が放漫経営を助長するのではないかとの指摘はまさにモラルハザードの発生を指摘するものである。
このようなモラルハザードの問題に配慮することは保険業界の常識であり,保険商品を設計したり,個々具体的な保険の引き合いに際して保険条件を具体的に設定して個別の保険契約を引き受けたりするにあたっては,モラルハザードができる限り混入しないように保険会社は注意を払っている。
したがって,モラルハザードの回避は,D&O保険の適法性に関する喧しい議論がなくとも当然に保険会社が考慮するところである。
ただ,保険業界の外部からモラルハザードを根拠として特定の保険商品の適法性についてまで疑義が寄せられるということは経験したことがなかったため,D&O保険の適法性についての議論を受けて,保険業界はD&O保険の開発に際して通常の保険商品以上にモラルハザードの排除を徹底したように思える。
モラルハザードの混入を容易に許容することはできない。
しかし,モラルハザードの排除を徹底しようとすると今度は保険の有用性を損なう危険性もある。
保険には不確定的に発生する巨大な損害を,保険料という定額の経常的負担に平準化することによりコストの発生を安定化させるという機能を有しており,これが保険の有用性の中核をなしている。
そこで,保険会社は保険商品を販売,勧誘するにあたって,コストの平準化を根拠として「保険に加入すれば安んじて日々の生活を送りうる」点をしばしばセールスポイントとしているのであって,このようなセールスの手法が不当なものとは必ずしも評価されていない。
ところが,保険加入により安んじて生活することと,保険加入により注意力散漫になるというモラルハザードとは実のところ区別が大変困難である。
したがって,モラルハザードの排除にあまりに熱心になると,コスト平準化による平穏な日常の確保という保険の中核的有用性を損ないかねない。
会社役員が自ら行った不当な行為が原因となって損害賠償請求を受けるという事態に陥れば,単に損害賠償金,争訟費用といった直接的な金銭的な損害が発生するのみならず,将来の自分の地位が脅かされ,自分の名誉が傷つけられるなど様々な損害が生じることが容易に予想できるのであって,D&O保険によりヘッジできる損害はそのうちの一部に過ぎない。
とすれば,仮にD&O保険が広範な損害賠償請求を保険金支払対象とし,かつ損害賠償金,争訟費用の全額を保険によりてん補するものであったとしても,D&O保険の加入だけではD&Oリスクによって生ずべき全ての損害に対するリスクヘッジの手段として不十分なものである。
よって,会社役員はD&O保険による保護を受けうるとしても,自らの不当な行為を原因として損害賠償請求を受けるという事態はなおもできるだけ回避しようと考えるのが自然であろう。
そうだとすると,D&O保険の加入によって直ちに会社役員の放漫経営が招致されるとの懸念はいささか短絡的ではないかと思えてならない。
現行のD&O保険において,免責金額,縮小てん補割合の双方が適用され,実務上,D&O保険でのてん補限度額(保険事故が発生した場合の保険金の支払限度額)はさほど高額な金額とすることはできないことに加えて,広範な免責条項を有していることについては,D&O保険の利用者側から不満の声が寄せられているようである。
D&O保険が会社役員の放漫経営を招致するおそれは低いであろうとする考えが一般的になれば,広範な免責条項を削除したり,免責金額・縮小てん補割合の適用を制限したりする等によりD&O保険による保険金支払の範囲を拡張する方向でD&O保険の商品改定がなされる可能性はあるものと考えられる。
この点を窺わせる一つの傾向として,独自作成の特約条項を附帯して,通常のD&O保険よりも保険金支払の範囲を拡張した保険契約を可能とする取り扱いを実施して保険会社も出現しつつあることが挙げられる。
第4節 D&O保険の約款構成
D&O保険の内容を構成する保険契約者,被保険者,保険会社の相互間の権利義務関係はまず会社役員賠償責任保険普通保険約款にて規定される。
さらに,前述の通り,保険料の一部を会社役員の個人負担とする目的のために会社役員が株主代表訴訟に敗訴し,会社に対する損害賠償責任を負担するケースについては株主代表訴訟担保特約条項に基づいて保険金を支払うものとしていることから,この特約条項が必ず附帯されることになる。従って,D&O保険の全契約について会社役員賠償責任保険普通保険約款及び株主代表訴訟担保特約条項が適用されることになる。
そして,前述の通り,平成5年改定前のD&O保険の英文約款における普通約款に盛り込まれていた会社補償をてん補する条項は,改定後のD&O保険においては普通約款から切り離され会社補償担保特約条項にて規定されることとなったことから,会社補償のニーズのあるD&O保険についてはこの会社補償担保特約条項が附帯されることになる。
以上の会社役員賠償責任保険普通保険約款,株主代表訴訟担保特約条項及び会社補償担保特約条項の3つの約款内容は全保険会社共通である。
さらに,後述の通りD&O保険においては各保険会社の独自の判断により必要に応じて自由に特約条項を作成して附帯することが可能であることから,各保険会社独自作成の特約条項が附帯される。D&O保険における必須特約条項は株主代表訴訟担保特約条項のみであるが,実務上はどの保険会社も独自作成の特約条項をさらにいくつか附帯して保険引受を行うのが通常である。
なお,保険条件を構成する全ての具体的要素が約款文言自体に盛り込まれるわけではなく,保険契約者,保険期間などの基本的事項や,約款上「保険証券の記名法人欄に記載された法人」,「保険証券にこれと異なる時刻が記載されているときは」,「保険証券記載の総てん補限度額」など保険証券の記載において定められるものとされている事項については,保険証券に明記されることにより規定されることになる。
第5節 D&O保険の契約者
D&O保険は,会社役員個人が法律上の損害賠償責任を追及された場合に,それによって当該個人が被った損害を填補する保険であり,被保険者は会社役員個人である。このことからすれば,会社役員個人が自らの意思に基づいて個々に保険契約者となって保険契約を締結し,かつ被保険者として保険による補償を受けることが自然であるようにも思える。
しかし,D&O保険はそのような契約形態を採用していない。
D&O保険においては,会社単位でその役員が無記名で包括的に被保険者として取り扱われ,個々の会社役員単位でD&O保険に加入するか加入しないかという選択をすることはできないものとされている。そして,保険契約者となるのは会社であるのが通常である(※ 会社役員団が保険契約者となる例はあるようである)。
したがって,同じ会社の複数の会社役員間でD&O保険の加入の是非及び加入する際の保険条件につき見解の相違が生じた場合には,会社役員間の協議により意思の統一を図るより他ない。
会社役員に対する損害賠償請求は,1つの事件・事故について1名の会社役員だけが損害賠償請求を受けるというのではなく,同じ会社に属する複数の会社役員が同時に請求を受けることが多いという特徴が認められる。
従って,会社役員個人単位でD&O保険契約が存在するとすれば,保険契約ごとに保険金の支払限度額が設定されているとしても,保険会社は1つの事件・事故に対して複数のD&O保険契約について同時に保険金を支払う義務を負う可能性が多分にある。
その場合の支払保険金の集積額は同時に請求を受けた会社役員の人数に比例して巨額なものになるおそれがある。
よって,会社単位のD&O保険契約という取扱いには種々問題があるとしても,保険会社としては会社役員個人単位のD&O保険契約という取扱い方式は将来的にも採用しにくいものと言える。
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